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調査No.000001 ・・・・(掲載 98.5.20)

○.社長室の盗聴探査

突如、事務所の電話が鳴った・・・。
 電話の主は大手パチンコ機器メーカーの社長であった。
「”盗聴器が氾濫している”とのテレビを見て心配になった。一度、盗聴器の調査を行ってくれ!」
 気の短い早口の社長である。機嫌を損ねると大変と、すぐさま若い調査員1名を連れて社長の会社へ向かった・・・。
 都内某所の駅から約3分、新築の立派な10階建ての自社ビルである。
 入口の受付嬢に名前を告げると「お待ちしておりました」と丁重な対応で、エレベーターで社長室へ案内された。
 ドアをノックして木製の立派な扉を開けて中へ入る・・・。
 約80㎡(約25坪)以上ある広い社長室は、部屋の真ん中に黒色の革のゆったりとしたソファーがあり、回りには、大型テレビやオーディオ装置、冷蔵庫に観葉植物と居心地の良さそうな静かな部屋である・・・。
 思わず自分の住んでいる狭いアパートより広いのにたじろいでしまう。
 社長はニコニコしながら早口で「最近は同業他社との競争が激しくて」「テレビを見ていて念のため」と今回の依頼の目的を話し始めた。

 早速、私は若い調査員に盗聴探査機器で、一般的な盗聴の周波数の受信に取り掛からせた。
 静まり返った室内に「ザー」と言う無線特有の雑音が響き渡る中、サーチを続ける・・・。
 その時、室内の音に反応したハウリング音が入る。若い調査員と顔を見合わせ、間違いなく部屋の何処かに盗聴器が仕掛けられている事を確信した。
 社長にその事を伝えると、笑顔が一瞬引きつった様に歪んだ。
 次に私は室内の電気製品を一つ一つ別の探査機器で確認していった。
 オーディオ機器、冷蔵庫、シュレッダー、コピー機、ファックス、コンセント、スイッチ・・・。
 反応が無い。
 しかし、書棚の上の空気清浄機を検査したとたん、検査器がけたたましく「ビー」と鳴り出した・・・。
 中を開けてみると黒く鈍く光った、まさしく盗聴機器が取り付けられていた。
 唇を震わした社長は、甲高い声で「あいつだ!」と叫んだ。
 私達は、素早く盗聴器を取り外し、社長に手渡し、今後は余り部屋を静かにせずに音楽を流すなどの盗聴防衛の為の注意を伝えて社長室を後にした。

 その後数週間して、社長からお礼の手紙と社内人事の移動の通知を貰った。
 手紙の最後には「人が信じられなくなった」と小さな字で書き添えられていた・・・。

※実際の調査を題材にしました。
 但し、地域名・団体名・氏名等は変えてあります。