調査No.000003
○.自称右翼の男・・・・(掲載 98.5.21) 目黒区の旧家のご夫婦が顔色を変えて事務所へ相談に来た。 「25歳になる娘が右翼の男性と同棲している。将来 財産相続で揉め事を起こしたくない。どんな男性か・・・」 と、時折ため息交じりに重い口調で語り始めた。 娘には2人の姉弟がいて、弟は銀行勤めで、姉は公務員である。 その姉が最近、銀行員と見合いをして結婚まじかという。姉も両親 も「この事が先方に知れたら婚約が取り消されてしまう・・・」と 心配している。 早速調査に取り掛かる。 男は静岡県出身で身長165p、痩せ型でドス黒い顔立ち、不精髭の 42歳、自称"右翼"を名乗っている。 確かに過去に東北方面の暴力団に所属して"顧問"と称していた。 その組の組長との写真にもその男は写っている。 しかし、その組とは2年程前に拳銃密売事件で男が警察に情報を 漏らした事が原因で絶縁状態になっている。 その後東京の練馬区へ移り、右翼を名乗り日の丸を掲げ、日本刀 をちらつかせて"弱いものを守る"と一匹狼的な立場で活動を始めた。 過去に恐喝事件、銃刀法違反、傷害事件等合計13回も警察のご 厄介になっている。又、"薬をやっている"との情報も聞かれ一般人 ならまず近づかない人物である。 離婚歴もあり、3人の子供は先妻が育てている。もちろん養育費 は渡していない。 郷里の静岡でも鼻つまみ者で、 「たまに帰って来てもタクシーの代金は踏み倒す、 畑は勝手に売り払う、家の物は持ち出す・・・」 と年老いた両親と兄は迷惑顔で話す。 一通りの調査を終えて、なぜ素人の娘がこんな男と親しくなった のか不思議に思いながら報告書をまとめた。
約2週間後に報告書を届けに依頼者の目黒の自宅を訪れる。広い 応接室で調査経過の説明をしながら、報告書を両親に手渡すと、母 親は予想していたのか、余り驚きもせず、 「今回のことで、私は最近食欲もなく、 気が重くて病院通いをしている」 と弱々しい声である。確かに2週間前と比べて顔色が良くない。頬 も痩せてやつれた様子がハッキリとわかる。父親も病気がちなのか 時折「ゴホン、ゴホン」と咳をしながら頷いている。 両親の「何とか娘に男と別れるように説得したが、一向に聞き入 れない」と困り果てた様子に、つい余計に、 「もし良ければ私が話してみましょうか。 第三者の私なら、素直に聞いてくれるかも知れません」 と、口をついて出てしまった 母親は目を輝かして「そうして頂けますか」と救いを求めるかの ように身を乗り出した。 気は重いが乗り掛かった船とばかりに、私は渋谷区にある、娘の 勤め先のブティックへ出掛け、夕方の退社時間頃に店の前で待ち構 えた。 同僚と店を出て駅付近で別れた娘に後ろから声を掛ける。一瞬驚 いた顔付きが直ぐに平静になる。娘は170pの長身で、気の強い感じ の顔立ちである。 近くの喫茶店へ誘い、両親の気持ちや男の素性の話をした。娘は 「私が男から聞いている話と違う」と首を傾げながら唇を少し噛む 仕草をする。 1時間程話をして「考えてみます」と立ち上がった娘の後姿を見 送りながら「うまく行くように・・・」と祈った。 それから1ヶ月程したある日、目黒の母親から手紙が届いた。内 容は、 「娘が男と話をして別れる決心がついた。 多少の手切れ金が掛かったが無事別れられそうだ。 姉の結婚式の日取りも決まり、ホットしている。」 と明るい文面であった。 読み終わった後に私は娘と話をしてみて本当に良かったと思いな がら、もし娘が男の素性を知らずに結婚していたらと思うと・・・ 真実を知る事の必要性を感じた・・・。 -----PS.毎年ご夫婦から、「その節は本当にお世話になりました・・・」 といった内容の年賀状が送られて来るたびにこの調査を思い出します。お幸せに。-----
※最近の実際の調査を題材にしました。 但し、地域名・団体名・氏名等は変えてあります。
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