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調査No.000002 ・・・・(掲載 98.5.20)

○.初老の浮気相手

 弁護士事務所から呼び出しを受けた。
 指定された時間に事務所へ訪問した。
 髪のやや白い眼鏡を掛けた品の良い60歳前後の女性が弁護士の脇に座り、緊張した顔付きで私を迎えた。
 まず弁護士から「こちらの女性の御主人の帰りが最近遅くなって心配している・・・」と説明が始まった。
 奥さんの話では「3年ほど前に大手の会社を定年退職して、神田に炉端焼き店を出した。夫は真面目な人で一生懸命仕事をしている。普段は自宅とお店の往復で真っ直ぐ家に帰ってくる。土曜日と日曜日はお店は休みで、今までは外出した事が無かったのに、最近友人に逢うとか囲碁に行くとか言って昼頃出掛けて、帰りが午前1時頃になることが多い・・・」
 私は早速今度の土曜日に尾行する事にした・・・。

 午前11時頃、恵比寿の高級住宅街の自宅前で張込みを開始した。
 お昼少し前に、奥さん(依頼者)に借りた写真よりやや太った身長165㎝前後の夫(被調査人)が外出をする。徒歩で恵比寿駅へ、切符を買って山手線を新宿方面へ向かった。
 大久保駅で降りて、改札付近で70歳前後の男性(老人)と挨拶をして立ち話を始める。
 暫く話した後に二人で切符を買って、再び山手線に乗り込んだ。
 車内では、楽しげに立ったまま話をしている。揺れる車内で時折、老人の肩にいたわる様に手をやっている。
 優しい雰囲気で古い友人の様に見受けられる。

 池袋を過ぎて上野駅で下車する。バスで浅草方面へ向かう。
 バスを降り、二人で浅草寺の境内をゆっくり歩き、久しぶりの再開を楽しんでいるかの様に見受けられる。
 どうやら依頼者の勘違いであったと私は内心”ホッ”とした気持ちで片手に持った小型カメラで記録写真を撮り続けた・・・。
 ところが、その後二人は花やしきから国際通り向かう細い道を急に右に曲がり、一軒の”ラブホテル”ヘ入った。
 入った所を見間違えたかと前後の店を覗くが、やはりラブホテル以外には考えられない・・・。
 私は直ちに追走している別の調査員に連絡して記録撮影の為、張込み用車両をホテル前の駐車場へ入れた・・・。
 ・・・待つこと丁度2時間、やはり二人は5~6mの間を開けてホテルを出てきた・・・。
 国際通りへ出ると再び二人は肩を並べて歩き始めた。
 その後、タクシーで上野駅へ向かい切符を買って改札付近で二人は別れた。
 70歳前後の老人を埼玉県浦和市まで尾行して自宅を確認した。

 私は事務所へ帰り、机に向かったまま報告書が書けずに呆然としていた・・・。
 間もなく、調査員がたった今現像されたばかりの写真を私に手渡した。
 その写真にはやはりホテルから出て来た二人が写っていた・・・。
 やっと持ったボールペンはやけに重く鉛のようだ。

 依頼者はいったいどんな顔でこれを読むのだろうか・・・。

※実際の調査を題材にしました。
 但し、地域名・団体名・氏名等は変えてあります。